ドクターG 『転びやすい』原因の病名は『薬剤性パーキンソン症候群』
28歳のパティシエである景山ひなさん(女性)は、1周間前から転びやすくなり、体が思うように動かなくなってきたという。はたして景山さんの病名は何なのか?
2016/01/07放送の「総合診療医 ドクターG」から
景山ひなさん(仮名)は、28歳女性(パティシエ)です。患者さんの主訴と検査値は次のとおりです。
・1周間前から転びやすくなる。体が思うように動かない
・軽くぶつかっただけで、バタンと後ろに倒れてしまった
・1か月前から手が震えるようになったが、道具を使っている時は震えはない
・頭痛はない
・これまでに大きな病気やケガ、手術などの経験はない
・家族で重い病気にかかった人はいない
・2か月前にライバル店が現れてから体調を崩し、それ以来、睡眠導入剤と胃薬を飲んでいる
・一番最近の生理は2か月前。生理が遅れることはあまりない
・妊娠の可能性はない
・基礎データは、体温36.2℃、血圧120/80、脈拍70回/分、呼吸数13回/分
なんと、3人の研修医はすべて『薬剤性パーキンソン症候群』と診断
薬剤性パーキンソン症候群とは、薬の副作用によってパーキンソン病[*1]の症状を起こす病気で、その症状もパーキンソン病と同じ症状が現れる
しかしドクターGはこの時点で、若年性パーキンソン病を否定することはできないことを指摘した
景山さんに見られた症状を改めて検証
・姿勢反射障害(姿勢がきちんと保持できない)
・ピサ徴候(姿勢反射障害のひとつで、剤で状態が傾く)
・安静時振戦(安静時にだけ震える)詳細には『丸薬まるめ運動(ピル・ローリング)』があった
患者の体がスムーズに動いていないのは、脳の中でドーパミン[*2]がうまく作動していない可能性がある
パーキンソン病は、脳の黒質が変性してドーパミンが作れなくなる
一方、パーキンソン症候群は、ドーパミンの伝達が邪魔されて作用しなくなる
どちらも同じ症状がでる
そこでドクターGは、研修医たちにパーキンソン症候群になる原因を挙げさせた
・薬剤性
・外傷性
・脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)
・中毒(一酸化炭素中毒)
・ウイルソン病[*3](銅が目の周り(角膜周縁)にたまる特徴がある)
・マイヤーソン徴候[*4]があるか?
・筋トーヌス検査[*5]で筋肉が固くなっていないか?
ドクターGは、薬の副作用が原因だと確認できる問診があるという
【検診】
・バレー徴候(脳の機能障害があれば、目を閉じて20秒以内に手が下がる)正常
・指鼻検査(小脳の障害があれば、指と鼻に性格に触れることができない)正常
・角膜観察→正常
・筋トーヌス検査→異常
・マイヤーソン徴候→異常
【問診】
・クリニックの薬は効いたか?はい。胃の調子も良くなった
・乳房の張りや乳汁は?少し貼った感じがあり、2日前にはブラにシミがついていた
・最初どちらの手が震えていたか?両方
最終診断でも3人の研修医すべてが『薬剤性パーキンソン症候群』と診断
・プロラクチン(乳腺刺激ホルモン)を作っているのが下垂体で、そこに何らかの刺激が加わってプロラクチンが過剰分泌されて乳汁が出てしまった
・薬の副作用でドーパミン[*6]が遮断されると、プロラクチンが出すぎてしまい、乳汁が出てしまう。また月経も止まる
・パーキンソン病であれば、片手から徴候が出るが、薬剤性だと全身同時に起こるが、患者さんは両側で症状が起こっている
・胃薬の中ドーパミンをブロックする作用があって、さらに気分も良くなる薬とは「スルピリド」[*7]である
【景山さんのその後】
薬を止めてから、およそ2週間で症状が消え、原因を知ったことで気分も改善し、今は元気に仕事をしている。
【ドクターGのメッセージ】
薬もリスクという言葉がある。薬には良い作用もあるが、多くの薬には副作用もある。重要なのは、薬剤性を疑った上で問診を続けること。そのために体の中で起こっているメカニズムを理解して、積極的に聞くことが大事である
今回のドクターGは、地域医療機能推進機構 総合診療医 徳田安春先生。転び方の詳しい観察が重要だと話す。
また研修医は
A.新潟県 糸魚川総合病院 須澤俊さん
B.千葉県 総合病院国保旭中央病院 西脇彩さん
C.東京都 慶應義塾大学病院 鈴木慎一郎さん
の3人です。
[*1]脳の黒質が編成して起きる50歳以上に多く発症する病気で、手足の震え、動作の緩慢、筋肉のこわばり、バランスがとりにくいなどの症状が現れる
[*2]脳からの司令などを伝える神経伝達物質のひとつで、脳の黒質で作られる。ドーパミンが作用すると、意欲が向上したり、体がスムーズに動かせるようになる
[*3]体内に銅がたまって排出できなくなる遺伝性の病気。たまった銅によって、脳や腎臓、肝臓、目などに障害が起こるほか、パーキンソン病と同じ症状が現れる
[*4]眉間を叩くと、瞬きが続いてしまう症状
[*5]筋肉のトーヌス(緊張度)を観察する
[*6]ドーパミンはプロラクチンが出過ぎないようにコントロールしている
[*7]ドーパミンの作用を遮断する薬。抗うつ薬としても知られるが胃腸の働きを改善する効能もあるが、副作用としてパーキンソン病と同じ症状がでることがある
『息が苦しい』原因の病名は『緊張性気胸』
『息が苦しい』原因の病名は『過換気症候群』
『足がつる』原因は病名『摂食障害』ってなぜ!?
総合診療医 ドクターG 2016バックナンバー
2016/01/07放送の「総合診療医 ドクターG」から
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主訴(症例):転びやすい
景山ひなさん(仮名)は、28歳女性(パティシエ)です。患者さんの主訴と検査値は次のとおりです。
・1周間前から転びやすくなる。体が思うように動かない
・軽くぶつかっただけで、バタンと後ろに倒れてしまった
・1か月前から手が震えるようになったが、道具を使っている時は震えはない
・頭痛はない
・これまでに大きな病気やケガ、手術などの経験はない
・家族で重い病気にかかった人はいない
・2か月前にライバル店が現れてから体調を崩し、それ以来、睡眠導入剤と胃薬を飲んでいる
・一番最近の生理は2か月前。生理が遅れることはあまりない
・妊娠の可能性はない
・基礎データは、体温36.2℃、血圧120/80、脈拍70回/分、呼吸数13回/分
研修医の診断
なんと、3人の研修医はすべて『薬剤性パーキンソン症候群』と診断
薬剤性パーキンソン症候群とは、薬の副作用によってパーキンソン病[*1]の症状を起こす病気で、その症状もパーキンソン病と同じ症状が現れる
しかしドクターGはこの時点で、若年性パーキンソン病を否定することはできないことを指摘した
改めて検証
景山さんに見られた症状を改めて検証
・姿勢反射障害(姿勢がきちんと保持できない)
・ピサ徴候(姿勢反射障害のひとつで、剤で状態が傾く)
・安静時振戦(安静時にだけ震える)詳細には『丸薬まるめ運動(ピル・ローリング)』があった
パーキンソン病なのか?薬剤性パーキンソン病なのか?
患者の体がスムーズに動いていないのは、脳の中でドーパミン[*2]がうまく作動していない可能性がある
パーキンソン病は、脳の黒質が変性してドーパミンが作れなくなる
一方、パーキンソン症候群は、ドーパミンの伝達が邪魔されて作用しなくなる
どちらも同じ症状がでる
パーキンソン症候群の原因
そこでドクターGは、研修医たちにパーキンソン症候群になる原因を挙げさせた
・薬剤性
・外傷性
・脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)
・中毒(一酸化炭素中毒)
・ウイルソン病[*3](銅が目の周り(角膜周縁)にたまる特徴がある)
パーキンソン症状があるのか確認する
・マイヤーソン徴候[*4]があるか?
・筋トーヌス検査[*5]で筋肉が固くなっていないか?
原因を絞り込む
ドクターGは、薬の副作用が原因だと確認できる問診があるという
【検診】
・バレー徴候(脳の機能障害があれば、目を閉じて20秒以内に手が下がる)正常
・指鼻検査(小脳の障害があれば、指と鼻に性格に触れることができない)正常
・角膜観察→正常
・筋トーヌス検査→異常
・マイヤーソン徴候→異常
【問診】
・クリニックの薬は効いたか?はい。胃の調子も良くなった
・乳房の張りや乳汁は?少し貼った感じがあり、2日前にはブラにシミがついていた
・最初どちらの手が震えていたか?両方
研修医の最終診断とカンファレンス(症例検討会)
最終診断でも3人の研修医すべてが『薬剤性パーキンソン症候群』と診断
・プロラクチン(乳腺刺激ホルモン)を作っているのが下垂体で、そこに何らかの刺激が加わってプロラクチンが過剰分泌されて乳汁が出てしまった
・薬の副作用でドーパミン[*6]が遮断されると、プロラクチンが出すぎてしまい、乳汁が出てしまう。また月経も止まる
・パーキンソン病であれば、片手から徴候が出るが、薬剤性だと全身同時に起こるが、患者さんは両側で症状が起こっている
・胃薬の中ドーパミンをブロックする作用があって、さらに気分も良くなる薬とは「スルピリド」[*7]である
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景山さんのその後とドクターGのメッセージ
【景山さんのその後】
薬を止めてから、およそ2週間で症状が消え、原因を知ったことで気分も改善し、今は元気に仕事をしている。
【ドクターGのメッセージ】
薬もリスクという言葉がある。薬には良い作用もあるが、多くの薬には副作用もある。重要なのは、薬剤性を疑った上で問診を続けること。そのために体の中で起こっているメカニズムを理解して、積極的に聞くことが大事である
補足情報
今回のドクターGは、地域医療機能推進機構 総合診療医 徳田安春先生。転び方の詳しい観察が重要だと話す。
また研修医は
A.新潟県 糸魚川総合病院 須澤俊さん
B.千葉県 総合病院国保旭中央病院 西脇彩さん
C.東京都 慶應義塾大学病院 鈴木慎一郎さん
の3人です。
[*1]脳の黒質が編成して起きる50歳以上に多く発症する病気で、手足の震え、動作の緩慢、筋肉のこわばり、バランスがとりにくいなどの症状が現れる
[*2]脳からの司令などを伝える神経伝達物質のひとつで、脳の黒質で作られる。ドーパミンが作用すると、意欲が向上したり、体がスムーズに動かせるようになる
[*3]体内に銅がたまって排出できなくなる遺伝性の病気。たまった銅によって、脳や腎臓、肝臓、目などに障害が起こるほか、パーキンソン病と同じ症状が現れる
[*4]眉間を叩くと、瞬きが続いてしまう症状
[*5]筋肉のトーヌス(緊張度)を観察する
[*6]ドーパミンはプロラクチンが出過ぎないようにコントロールしている
[*7]ドーパミンの作用を遮断する薬。抗うつ薬としても知られるが胃腸の働きを改善する効能もあるが、副作用としてパーキンソン病と同じ症状がでることがある
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