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蚕の繭糸から化粧品から医薬品、人工血管まで作れてしまう不思議!





医薬品や化粧品、人工血管まで作れてしまうという蚕のまゆ。その秘密は蚕の高いタンパク質生産能力で、それを可能にするのが、蚕に薬を作らせる昆虫工場という技術だという。

※2015年11月22日放送の「サイエンスZERO」から

昆虫工場


昆虫工場とは、蚕の体を薬の製造工場にしてしまおうという取り組みだ。

愛媛県の東レ 愛媛工場では、蚕にインターフェロンと呼ばれる物質を蚕に作らせており、ペットの風邪やアトピーなどの薬が作られている。

その方法は次の手順で製造されている
・蚕にウイルスを感染させる
・蚕の全身にウイルスが広がる
・蚕の成長とともに、蚕の細胞を乗っ取り、体中にインターフェロンを作らせる


なぜ蚕を使うのか?


それは蚕の高いタンパク質の生産能力(成長して物質を作り出す能力)にある。さきほどのインターフェロンは、蚕一匹から製品数十本に及ぶという。

また、鶏を例に取ると、一個の卵(60g)から鶏(3kg)が一羽(50倍)まで成長するのに50日かかるが、蚕は1か月で体重が1万倍にもなってしまう

現在の蚕は自然界に存在しない生物になった。昔は小さなまゆしか作らなかった蚕は、人間が大きいまゆを作る蚕を交配していった結果作られたものだからだ。

その結果、5000年たった今、地球上でもNo.1クラスの高いタンパク質生産能力をもつ生き物になったのだ。


繭から薬の成分を取り出す


しかし、それでも蚕の体内からインターフェロンを取り出したり、大掛かりな設備が必要だという問題を抱えている。

そこで、それらを解決したのが、まゆの中に薬の成分を作らせるというものだ。

その前段階として、光るまゆを作らせることに成功している。

これは直径1mmのカイコの卵の中にクラゲなどの光る遺伝子を注入する。この遺伝子がうまく生殖細胞に入れば、それらのカイコから光る性質を持った子孫が生まれる。これが遺伝子組換カイコになるのだ。

まゆから薬の成分を取り出すのは非常に簡単で、ある液体にまゆを浸すだけで、その成分を抽出することが可能となる。



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繭で何でも生成!広がる産業化


この技術を使うと糸の性質を変えることもできる。

【人間のコラーゲンを作る蚕】
またコラーゲンたっぷりの化粧品を作ることもできる。それは人間のコラーゲンをカイコに作らせて作った化粧品だ。

まゆの中に作られたコラーゲンは液体につけて溶かし出すだけで抽出が可能だ。この方法であれば、大掛かりな設備も必要なく、安全で簡単に取り出すことができる。

また、まゆの中にある成分は長期保存ができるというメリットもある。

現在では抗体や医薬品などを作る研究が行われている。


【クモ糸シルクを作る蚕】
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昨年誕生したカイコには、これまでより遥かに切れにくいシルクを作り出している。このカイコに組み込まれているのはオニグモの遺伝子。

オニグモの糸は地上最強の繊維と言われ、鋼鉄の20倍の切れにくさ誇っている

約0.6%のクモ糸の成分を含ませたクモ糸シルクの切れにくさは、通常のシルクの5割もアップした。

この糸には、切れにくい手術用の糸や防災ロープとしての利用が期待されている

農業生物資源研究所 小島桂主任研究員は『どんな生物の遺伝子であれ、タンパク質であれば、カイコのシルクの中に作らせてその声質をつけることができる』と話す。


遺伝子組み換え蚕から作られた商品


その他にも、遺伝子組み換え蚕からは次のような商品が作られている。

・骨粗しょう症検査薬
・軟骨再生スポンジ
・化粧品
・傷を治すフィルム
・強い手術用の糸
・人工血管
・抗体
・ICチップ基盤

理論上は、どんなタンパク質も作れる。今では顧客の要望に合わせてオーダーメイドで作るビジネスも始まっているのだ。

いろんなタンパク質が作れる蚕の秘密


なぜカイコで、こんなにもいろんなタンパク質を作ることが可能なのか?

カイコは2008年にゲノム(全遺伝情報)が解読されている。この設計図が解読されているため、どの部分を遺伝子組換えすればいいか、その設計が簡単になってきている。

ただし、一つ問題があり、遺伝子組み換え生物を管理する法律があり、周囲の野生生物に影響がないことを示して飼育方法を確立する必要がある点だ。


遺伝子組み換え蚕の課題とメリット


その飼育試験が行われているのが、群馬県蚕糸技術センターだ。
ここでは養蚕の飼育環境を再現して、およそ10万頭を飼育している。

そして研究所の近くで、クワコと呼ばれる唯一カイコと繁殖できるガを捕まえて、光る遺伝子が組み込まれていないか確認している。

また養蚕農家への普及に向けた動きも出てきており、養蚕農家への遺伝子組み換えカイコについての説明会なども開かれている。

一番のメリットは、今までの設備や飼育方法で遺伝子組み換えカイコを育てることができる点だ。


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